高校生G20サミット 2019

イベントデザイン監修


制作したロゴマークとイメージ・グラフィック


プロジェクト概要

2019年5月に開催された高校生G20サミットのロゴやWebサイトデザイン等のデザインのすべてを監修した. G20大阪サミットの開催を機に,初めての開催となった会議へ企画段階から関わり,会議の象徴としてふさわしいようなロゴやイメージ・グラフィックなどを制作した. また初めてとなるWebサイトのデザインにも取り組んだ.
この会議は今回初めての開催となり,前例のないイベントを1から企画するという経緯を経て開かれた. その企画および運営を行なった同世代の高校生や主催団体であるY20サミットの代表らの意見や要望を反映しながらデザインを制作した. 外務省の後援があることやG20大阪サミットとの関連性を考慮し,少しでも差別的見解など問題視される可能性のあるデザインは不採用となった. このような通常より一層厳しい制約の中での制作には困難もあった.


高校生G20サミットとは

高校生G20サミットとは,全国から高校生が一同に集結し,6月に開催されたG20大阪サミットに向けて政策を作る会議である. 初開催であったこの会議では,議題[Future of Work]に対する解決策と世界における日本が取るべきスタンスについて議論し,Y20代表団,大学生や社会人によるアドバイスの元,高校生G20サミットの高校生の提言を作成した. 最終的にはG20大阪サミットに向け安倍内閣総理大臣に提出された. また高校生G20サミットは,高校生が議論する場を設けるだけでなく,日本中の高校生を繋ぎ,新たな交流や活動を生むきっかけの場を作った. G20首脳会議の公式付属会議であるY20サミットが主催し,外務省が後援となり開催された.


使用ソフト

software: Adobe Illustrator/Illustrator for iPad/Photoshop


ロゴマーク制作

デザイン制作の依頼の時点では,高校生G20サミット自体は未だ企画の段階であった. ロゴマークなどに関する方向性や要望が依頼側も未決定であったため,まずは私が3つの草案を制作した. これらを踏まえてまたデザインについて詳しく作っていく予定であった.
今回の高校生G20サミットとは国際的な問題に取り組む上,Y20やG20首脳会議および外務省などが関わっていることから注意すべき点が多かった. 性別などの差別的見解が生まれないものにすることや,日本らしさを強調したものにするとしても太陽など日章旗など政治的意図のある絵柄と受け取られる可能性のあるものなど,注意あるいは避けるべき点を気にすることが課題であった. また富士山や鶴などを用いれば日本らしさは伝わるが,そのような代表的なもののデザインはありふれており,新しさを感じさせるモチーフを考えるのにも苦労した.
以下が当初の草案である.


提案1
提案2
提案3

これらに対して依頼側のコメントとしては,未だ総意で使いたいと思えるデザインがないというものだった. コンセプトやテーマが良いものはあったが, 日本らしさと若さを両立したようなものがないことが最大の課題となった. これを受けて結論としては3つ目の草案のような鯉をモチーフにした発展案を制作することに決定した.
草案へのフィードバックを受け,錦鯉をモチーフにしたものを制作した.和風であり世界的に日本らしいと認められているようなものを題材とすることが依頼内容に含まれていたためである. また鯉は縁起のいいものであるとされており,[強さ],[勇気]などの意味も持っているため、日本と世界の未来という議題に果敢に取り組む高校生G20サミットの姿勢をうまく表していると考えた.具体的にこのデザインは,3匹の鯉が連なり円を作っている. そしてその鯉の模様が円の中まで延長し世界地図の外形を描いているものである. また3匹の鯉はそれぞれ高校1年,2年,3年を象徴しており,円を成して泳いでいるのは同じ場所で生きている仲間であるという意味を持っている.


スケッチ1
スケッチ2
スケッチ3

(左)錦鯉をモチーフにした発展案(iPadでのスケッチ) (中央)(右)ノートのスケッチ

だがこの提案デザインに対して小規模な調査を行ったところ,好評である意見がありつつも,地球の概形を形作る赤い模様が鯉が出血している様子に見えてしまうという意見があった. これを踏まえて協議した結果この提案デザインは不採用となった.
その後高校生G20サミットの主催者であるY20サミットの方から竹をモチーフにし緑を基調としたロゴマークにしてほしいという要望があった. これを踏まえて新しいデザインに取り掛かった. 竹に重点を置きスケッチを描いていくと予想以上に難しいことに気付いた. デザインするにあたって竹を簡略化し過ぎてしまうと単なる細い四角形になってしまい,複雑化し過ぎてしまうと家紋のような古い見た目になってしまうという問題点があったのである. ここで私はこのロゴマークで最も大切にしたい要素を再度確認し整理することにした. それは[日本],[3(高校の3学年を表す)],[緑],[若さ(モダンなデザイン)]の4つであった. そして私は竹と[草案1]のデザインを融合させたものにたどり着いた.


スケッチ4
スケッチ5
スケッチ6

(左)竹と日本地図を融合したデザイン(iPadでのスケッチ) (中央)ノートのスケッチ (右)iPadのスケッチ

このデザインは依頼側からも好評であった. そこでこのデザインを元に新たな発展案を制作した. 変更点は主に竹の見た目に似せるために四角にくぼみを持たせることであった. また、笹の葉の追加などの細かな提案もあり多くのパターンのデザインを作り協議した. 協議の際に課題となったのが沖縄などの離島を完全に省略していることについてであった. 日本地図を簡略化してしまうことによって省略されてしまった地域の人々にとって失礼なデザインになってしまうのではないかという問題であった. だがこれに関しては, 離島に限らずこの日本地図では列島全体を簡略していることから特定の人々への不敬意であるとは受け取られることはない,という結論に至っ.
そして最終的には一番下のようなロゴマークに決定した. 会議に集う3つの学年を象徴する3本の竹は,適度なくぼみを持つことで一目で竹であるとわかるデザインとなった. また落ち着いた2種類の緑色は竹のシルエットとともに日本らしさを演出しており,色を分けることで日本地図の概形を強調している. また笹の葉などのディテールを省くことによってミニマルかつモダンなものになっており,新しさや若さという要素を表現した. 考慮すべき点をすべて十分に満たし,依頼側も私自身もとても納得のいくロゴマークが完成した.


スケッチ7

竹と日本地図をモチーフにした発展案(iPadでスケッチ・Illustratorで作成)


ロゴ最終盤

ロゴマーク&ロゴタイプ最終決定版


Webデザイン

高校生G20サミット公式Webサイトのデザインも私が請け負った. サイトに関してはY20サミットの運営の方がコード等の実装をしてくださっており,それをもとに色合いなどのデザインの監修を任された. またサイトのトップイメージの制作も依頼された. これに関しては既に存在したY20サミットの画像を緑などの高校生G20サミットの要素を組み込みながら再現するという内容だった. 最終的に私は白紙の状態から同じような画像やエフェクトを用いて可能な限り似ているものを作り上げた.


Web用サムネイル1
Web用サムネイル2

Webサイト用に制作したトップイメージとFacebookでの告知用画像


会議当日

会議当日には私が制作したロゴを使用した横断幕やWebサイト用に制作したデザインを用いたポスターなどが使用された. 会議には全国各地から約150人の高校生が集い,各々が興味関心のあるテーマについて5つの教室に分かれ議論した.その後全体で会議のテーマである[Future of Work]について高校生の提言を作成した.
私自身は会議運営の手助けとして当日にも会議に参加した. 人工知能と今後のプログラミング教育などの多種多様なテーマについて数時間議論している参加者の様子を見て,ロゴマークなどのデザインが正確に高校生G20サミットを捉えられていたことを実感することができた.

会議当日の様子1
会議当日の様子2

(左)会議の終盤に参加者全員で議題[Future of Work]についての高校生の提言をまとめている様子. すべての参加者 が議論に積極的に参加した
(右)会議当日は作成したデザインを用いたポスターが張り出された

会議当日の様子3

(右)大会終了後の運営チームと参加者全員での集合写真。中央の横断幕のデザインも制作した。

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